「アトランタ・ニューオリンズ・ヒューストン・メンフィス・マイアミ」を中心としたアメリカ南部エリアで誕生し、1990年代後半から徐々に人気を獲得していったヒップホップの新しいジャンル「ヒップホップ・サウス」。
インパクトのある強いビートを用いた重厚感あるサウンドに、アメリカ南部特有の強い訛りを用いたラップ、そしてシンセサイザーを多用し派手なメロディーラインを組みあげ、ワイルドな曲調へ仕上げるのが「ヒップホップ・サウス」の大きな特徴です。
「ヒップホップ・サウス」は比較的新しいヒップホップのサブジャンルですが、ヒップホップは「東海岸&西海岸」だけの音楽ではなく、エリアに囚われずに「良い音楽は良い」を確実に表現する先駆者的な存在と言えます。
さて今回紹介するアーティストは、サウスサイド・ヒップホップのスタイルを確立し、新たな時代を切り開いた伝説的なアーティスト「Outkast」「Lil Wayne」「T.I.」をご紹介いたします。
初めてヒップホップを聴き方や、ヒップホップは聞いているけどサウスは初心者という方向けに、おすすめのアーティストやオススメアルバム&楽曲などを厳選してご紹介したいと思います。ぜひ参考にしてみてください。
初めてヒップホップを聴く方へのわかりやすい解説を目指していますが、専門用語を含む表現が所々あります。
聞きなれない表現もあるかと思いますので大まかな専門用語をまとめてみました。以下参考にしてみてください。
【メロディー/メロディーライン】
=曲を聴いたときに単一の実体として聴こえる音の線形を指します。
【ビート/ベースライン】
=「生ドラム」や「ドラムマシン」などを用いた重低音により、演奏するリズムまたはパターンを指します。
【トラック】
=ビートとメロディーを合体させた音の総称を指します。
【リリック】
=ラップ部分の歌詞を指します。
【ライム】
=似たような響きをもつ言葉を同じリズムで発することを指します。
【フロウ】
=声の高さや強弱・速度に変化をつけ、曲を印象付ける歌いまわしのことを指します。
【スラング】
=ヒップホップ専門の造語や、仲間内にだけ通じる暗号のような言葉を指します。
【メロー】
=ゆったり落ち着いたスローテンポな曲調で、繊細さを感じる曲調を指します。
【フリースタイル】
=その場で即座に歌詞をつけてラップを行うスタイルを指します。
【G-FUNK(ジー・ファンク)】
=ギャングスタ・ファンクの略。落ち着いた雰囲気のトラックにハードなラップを合わせたものを指します。
Outkast
(アウトキャスト)
「P-Funk」をベースに「Funk・Soul・Electronica・Rock」などの要素を取り入れ、独創的な音楽スタイルを確立したアーティスト「Out Kast(アウト・キャスト)」。
andre3000(アンドレ3000)とBig Boi(ビッグ・ボーイ)からなる2人組は、後にサウスの先駆者として語り継がれます。
1990年代前半、当時は西海岸ヒップホップと東海岸ヒップホップの黄金世代が席巻し、ヒップホップ=西or東の構図が出来上がっていました。
そこへ突如アトランタ出身の初のメインストリームラッパー「Out Kast」が現れ、ヒップホップサウスの先駆者として台頭する運びとなります。
従来のヒップホップアーティストとは違い、新しいスタイルに次々と挑戦していくクリエイティブな姿勢がヒップホップファンの多くの心を鷲掴みにします。
「Out Kast」の楽曲は全く型にはまっておらず、他のアーティストが挑戦しないようなスタイルにも挑戦し、ヒップホップ史上最も売れたグループの1つとして功績を残します。
流動性の高い音楽スタイルを武器に、西と東のヒップホップ2大勢力図に「待った」を掛けたヒップホップサウスの伝説「Out Kast」のオススメアルバムとオススメ楽曲をご紹介します。
おすすめのアルバム
Stankonia
<Outkast>
「Out Kast」を語るならこちらのアルバムがオススメです!「Ms. Jackson」や「B.O.B. (Bombs Over Baghdad)」などの代表作が収録されており、全ての曲がヒップホップの常識に囚われていない仕上がりでオススメです!
おすすめ楽曲①
Ms. Jackson
<Outkast>
要チェック!
楽曲No.5
「Ms. Jackson」
色々なジャンルがミックスされていると言ったら表現があっていると思います。
全く聞いたことのない様な斬新なトラックに、コミカルでリズミカルなラップを披露いた1曲。
「Out Kast」の代表的な1曲であり、全米で大ヒットを記録しました。
おすすめ楽曲②
Bowtie
<Outkast feat. Sleepy Brown & Jazze Pha>
要チェック!
楽曲No.19
「Bowtie」
女の子を口説く様な軽い語り口でラップし、ジャズやファンクを取り入れたメロディーラインにヒップホップビートを乗せた作品。
ジャンルに囚われないヒップホップとは、この曲のことを指すにふさわしい内容です。
おすすめ楽曲③
Behold a Lady
<Outkast>
要チェック!
楽曲No.2−12
「Behold a Lady」
シンプルで軽快なビートに、無駄を省きビートを強調する様なメロディーラインが特徴の1曲。
ラップも軽快で言葉を詰め込むことなく、むしろラップではなく歌ってない?と思わせるほど自由奔放な仕上がりです。
おすすめ楽曲④
Spaghetti Junction
<Outkast>
要チェック!
楽曲No.8
「Spaghetti Junction」
ジャズをサンプリングした様な落ち着いたトラックに、やや早な口ラップを披露した1曲。
シンプルなトラックであるためラップ部分が十分に引き立ち、それに合わせてラップを波立たせる様なフロウが思わずクセになります。
おすすめ楽曲⑤
B.O.B. (Bombs Over Baghdad)
<Outkast>
要チェック!
楽曲No.11
「B.O.B. (Bombs Over Baghdad)」
駆け抜ける様な強くてハイテンポなリズム打ちに、ビートを引き立たせるシンプルなメロディーライン、そして2人の高速ラップが見事に融合した1曲。
「Out Kast」の代表曲でもあり、こちらも全米で大ヒットしました。オススメですよ!
Lil Wayne
(リルウェイン)
独特でコミカルかつ変則的な歌唱スタイルとフロウ、そして派手なルックスで今もなお活躍するサウス出身のベテラン「Lil Wayne(リルウェイン)」。
サウスエリア特有の鈍りをラップに込め、誰も真似できないラップスキルが多くのファンを獲得しています。
「生きている中で最高のラッパー」を自称する「Lil Wayne」は、アメリカ合衆国ルイジアナ州ニューオーリンズ出身。
彼がヒップホップの道を歩むきっかけは、11歳の時にキャッシュマネーレコードのオーナー「bardman」に出会うところから始まります。
留守電に自分のラップを何度も残したことがきっかけで「bardman」の目に留まり、若干11歳の若さでキャッシュマネーレコードと契約するに至ります。
そして1997年にキャッシュマネーレコードの所属グループ「ホットボーイズ(2001年に活動休止)」の一員としてラッパーのキャリアをスタートさせるに至ります。
2008年にシングル「Lollipop」が全米1位を獲得し、同年リリースしたアルバム「Tha Carter Ⅲ」が300万枚のメガセールを記録するなどの快進撃を披露し、現在も精力的に音楽活動を続けています。
そんな彼のオススメアルバムとオススメ楽曲をご紹介いたします。
おすすめのアルバム
Tha Carter II
<Lil Wayne>
「Tha Carter Ⅲ」が「Lil Wayne」の中で最も有名でありますが、あえて私は「Tha Carter Ⅱ」をオススメします。
サウスを感じられるヘビーバウンスビートの他、チルアウトな曲も多く収録されており、「Lil Wayne」が初めての人へおすすめの内容となっています!
おすすめ楽曲①
Grown Man
<Lil Wayne Feat. Currency>
要チェック!
楽曲No.10
「Grown Man」
ゆったりとしたチルビートにリラックスできるメロディーラインを組み込み、緩めのラップでトラックの雰囲気を壊さない様に歌われた作品。
ヘビー・ビートを好む「Lil Wayne」ですが、チルサウンドも彼にとってお手の物!極上な仕上がりとなっていてオススメです!
おすすめ楽曲②
What About Me
<Lil Wayne feat. Post Malone>
要チェック!
楽曲No.9
「What About Me」
ボコーダーを使用して声質を変え、今風なヒップホップの仕上がりとなっている作品。
ビートは変則的で、重厚感あると思いきや軽いビートが特徴。
ハードなラップからゆったりしたラップをごちゃ混ぜにして編成された様な作品でオススメです!
おすすめ楽曲③
Grove Party
<Lil Wayne feat. Lil B>
要チェック!
楽曲No.11
「Grove Party」
リズミカルで軽快なビートに、ゲームサウンドの様な効果音を取り込んだメロディーラインが特徴な1曲。
ヒップホップ・サウスの進化系と言っても過言ではないこの曲は「Lil Wayne」がゆる〜くラップして見事に仕上げています。
おすすめ楽曲④
More to the Story
<Lil Wayne feat. feat. Raekwon>
要チェック!
楽曲No.3
「More to the Story」
緩いと思いきやキレのあるメロディーに、変則的と思いきやリズムに忠実なビートを取り揃え、まるで悪ふざけをしている様な「Lil Wayne」の超変則的なラップが特徴の曲。
曲の完成度はさることながら、客演に「Raekwon」を迎えているところが超オススメ!聞き応え抜群です!
おすすめ楽曲⑤
Coco
<Lil Wayne>
要チェック!
楽曲No.1
「Coco」
ヒップホップ・サウス特有のヘビーバウンスビートに、スローピッチでビートを煽る様なメロディーラインがオススメポイント。
今時のヒップホップサウンドを作り上げたのは、ずばり「Lil Wayne」が先駆者であることを忘れてはなりませんね!
T.I.
(ティーアイ)
太くてキレがあり、男前な声質によりラップを披露するヒップホップ・サウスの帝王「T.I.(ティーアイ)」。
アメリカ合衆国ジョージア州アトランタ出身の彼は、地元アトランタのストリートにて活躍し、ヒップホップ・サウスを不動のジャンルへ押し上げた1人です。
19歳の時に地元アトランタにてシーンに登場し、ラッパーとレコード会社経営と2足のワラジを履きシーンを台頭した「T.I.」。
彼の一番の魅力は「高度なリズム感を駆使してリリックを書き、堂々とラップする」というところ。
あえて難解なリズムをベースにして、そのベース上にリリックを乗せることで他のアーティストとの差別化を図り、ハイクオリティーな表現を実現しています。
そして堂々とした力強さあふれるラップスタイルが、さらに高みへともたらし多くのファンを獲得しています。
アトランタを代表するヒップホップ・サウスの帝王「T.I.」のオススメアルバムとオススメ楽曲をご紹介いたします。
おすすめのアルバム
King (Deluxe Version)
<T.I.>
タイトルから堂々たる雰囲気が伝わってくる様な作品「King (Deluxe Version)」。
ゆったりとしたサウスサウンドからアップテンポなナンバーまでバランスよく収録されています。
「T.I.」はもとより、ヒップホップ・サウスに触れたことのない人でもおすすめの内容です!
おすすめ楽曲①
No More Talk
<T.I.>
要チェック!
楽曲No.4
「No More Talk」
緊張感を煽る様なメロディーラインに、ゆったり目のビートが折り混ざった1曲。
キレのあるラップを披露する「T.I.」ですが、リリックの内容は中々なギャングスタラップ。
さすがサウスの帝王と呼ばれる実力の持ち主ですね!
おすすめ楽曲②
What You Know
<T.I.>
要チェック!
楽曲No.3
「What You Know」
大手を振って堂々とラップするかの様な豪快な1曲。
極太ビートに煽る様なメロディーがヒップホップ・サウスの醍醐味で、サウスのアップテンポはこうあるべきと示した様な仕上がりです。
「T.I.」がリリースした楽曲の中でも指折りの名曲でオススメです!
おすすめ楽曲③
Live In The Sky
<T.I. Feat. Jamie Foxx>
要チェック!
楽曲No.5
「Live In The Sky」
堂々とした雰囲気は残しつつ、ゆったりとしたメロディーに抑え気味のビート、そして「Jamie Foxx」の男らしさ全開コーラスでまとめ上げられた1曲。
ヒップホップ・サウスの帝王にしたらチルサウンドもお手の物。
曲の雰囲気を壊さず、心を込めて歌い上げています。
おすすめ楽曲④
Why You Wanna
<T.I.>
要チェック!
楽曲No.3
「Why You Wanna」
ヒップホップ・サウスの名を世に知らしめ、今までのヒップホップのあり方に新たな旋風を巻き起こした伝説の曲「Why You Wanna」。
「T.I.」がリリースした楽曲の中で最も評判が高く、多くのリスナーを取り込んだ最高峰の1曲です。オススメですよ!
おすすめ楽曲⑤
Lazy
<T.I. feat. Gizzle, Tokyo Jetz, Rara & London Jae>
要チェック!
楽曲No.4
「Lazy」
ゆったりとしたテンポに極太バウンスビート、そしてシンプルなメロディーラインをあしらった1曲。
現行のヒップホップと曲調が似ており、「Lil Wayne」と同じくヒップホップ・サウスの先駆者的な仕上がりがオススメポイント。
SOUTH SIDE COLLECTION
「サウスエリアの伝説たち」
のまとめ
いかがでしたか?今回はサウスサイド・ヒップホップのスタイルを確立し、新たな時代を切り開いた伝説的なアーティスト「Outkast」「Lil Wayne」「T.I.」の3人をご紹介いたしました!気に入ったアーティストや楽曲は見つかりましたでしょうか?
次回もアメリカ南部エリアのアーティストを中心にご紹介したいと思います。こうご期待ください!
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